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上質なカジュアルを

緑が溢れ、落ち着いた雰囲気がある自由が丘は、ファッション・スイーツ、美容や暮らしを彩る雑貨などのトレンド発信地として知られる街です。

自然や四季を愛しオーガニックやサステイナブル(持続可能な)にも敏感。
環境に優しく、上質なものを見抜く力もこの街に宿っています。

その自由が丘で音楽の基本となるレッスンを意味する“Solfège”という名前でレストランを開くことになったのは、わたしたち自身がもう一度初心に帰り、レストランの原点を問い直したいと考えたからです。

レストランの原点は食材です。
美しい彩りと自然の力が宿るいきいきとした新鮮な旬の食材をこよなく愛し、生産者や農家とともに、Solfègeを訪れた全ての方の身体と心が喜ぶ食材を厳選しました。
Solfègeの軽やかで上質な料理をお楽しみください。

Restaurant Solfege 開業ストーリー

“新しいレストランを作ることが僕たちにできる社会へのメッセージ”

まったく違う2年半に見えますがやってきたことは何も変わってません

──ミシュランガイドで一つ星を獲得した「リベルテ・ア・ターブル・ドゥ・タケダ」の元同僚が2年半ぶりに再会することになりましたね。

成澤 自分は、高級価格帯だった「リベルテ・ア・ターブル・ドゥ・タケダ」から、同じフランス料理をベースにしたレストランの「Restaurant TOYO Tokyo」に移りました。もちろんまったく同じではないですが、引き続きガストロノミー(美食)の世界を舞台にしてきたのに対し、タッキー(滝本)は、ガストロノミーとは違った舞台を選んだよね。

滝本 そうだね。今は、横浜・野毛を中心に横丁や飲食店をプロデュースするALL SUCCEEDという会社で2年半、料理長をやっていて、神奈川に5店舗ある「蒸氣屋」を見ています。本店では実際に店にも立っていますよ。「リベルテ・ア・ターブル・ドゥ・タケダ」とは価格帯ももちろん違いますし、なにより実際にお客様とコミュニケーションとりながら料理をするという、まったく違う経験をしています。

成澤 「蒸氣屋」は、毎日満席で、本当に楽しそうに仕事をしてるよね。

滝本 家族との時間を増やしたくてカジュアルラインを選んだんだけど、最初は高級店にいたプライドが邪魔して「俺、何でこんなことやっているんだろう」って、なかなかうまくいかなかったんです。それはたぶん、自分に余裕がなかったり、そもそもの引き出しが少なかったりしたからなんだと思うんですよね。たとえば、自分が考えた盛り付けをスタッフがまったく違うように盛り付けているのを見て「なんでだ?」って思っていたわけです。

成澤 「リベルテ・ア・ターブル・ドゥ・タケダ」では、1ミリ単位で盛り付けを決めていたからね。

滝本 でもそれは、野毛では求められていないことに気づくわけです。そこから、どんな風に盛り付けても自分がイメージする味になるような料理を考えるようになった。そうすると、ある程度スタッフも自由に盛り付けできて楽しく仕事ができるようになっていくわけです。

成澤 自分もRestaurant TOYO Tokyo に入る前に1カ月くらい、星付きのレストランから、それこそワイン1本1000 円で出すような日常使いのバルなどで働いたことがあるんです。そのときに、自分のサービスにはクセがあることを痛感した。営業中ずっと走り回っているような店からすると、カッチリしすぎて浮いてしまっていたんです。そのクセは、自分がやってきた「誇り」でもあるんだけど、それがどこにいっても正しいわけでもないわけです。その後、ふたたび高価格帯のRestaurant TOYO Tokyo に移ったわけですが、サービスの仕方を変えました。サービスの質は変えず、やり方を変えてあわせていったわけです。

──もちろん、新しいお店のSolfègeでももちろん違ってきますよね。

成澤 Solfège では、「上質なカジュアル」をテーマにしているので、サービスは自然体でやっていきたいです。真摯に、心を裸にして、一人ひとりの人柄が出せるようなサービスをしようと、スタッフには話しています。滝本に声をかけたのは、彼が2年半まったく違うステージで仕事をしているのを知っていたからです。高級店の料理やサービスをカジュアルラインに落とし込むのは、じつはすごく難しい。でも、今の滝本ならやってくれると思ったし、なにより今の彼の料理をカジュアルラインではない、もう1つ上のステージでも食べてみたいと、私自身が思ったからです。

コロナで飲食店が暗く沈んでいます 誰かが前向きに進んでいかないといけないんです

──新型コロナウイルス感染症の影響で、飲食店の利用頻度が全体的に下がってきています。そんななかで新店をオープンしたのはなぜですか?

成澤 じつは、新店の話自体は、今年の初めからあったんです。コロナの影響が3月頃からロックダウン(都市封鎖)が東京でも起こるかもしれない噂も広まって、このままだと多くのレストランが閉店するような事態になる。その先には飲食業界だけでなく、社会全体が暗くなっていくだろうと思ったんです。そんな中で、自分たちRestaurant TOYO Tokyo としては、前に進む取り組みをしたいと考えました。それは、ただ前向きな発信するだけでなく、事業としてしっかりとやりきる。それは、飲食業界にいる自分たちにとって、社会全体に投げかけられる大事なメッセージなのではないか。コロナによって決めたというよりは、コロナによって決断が早まったと自分たちでは思っています。

──コロナ禍で、人々の意識が大きく変わりました。レストランに求める価値も変わってくると思うのですが、Solfège ではどういった価値を提供していこうと考えていますか。

成澤 コロナ以前、レストランは、良い商品にお金を払うという価値が強くあったと思います。ワインや料理といったプロダクト自体に価値が向かっていた。しかし、ウィズコロナ/アフターコロナの世界では、プロダクトの向こうにある人やその商品を誰が作ったのか、誰が選んだのかに対して価値が強まっていくように感じています。

滝本 お客様はもちろんおいしい料理を食べたいと思っているのですが、それ以上にお店の人に会いに来ている。僕も蒸氣屋にいて感じたのはそこで、あくまで料理は、僕たちとお客様を繋ぐツールだと思うようになりました。だから、料理人がお皿もっていってもいいわけです。

成澤 そうだよね。キッチンとかホールというのは、レストラン側の話しで、お客様にとっては全員が「Solfège のスタッフ」なわけですから。なのでSolfège ではその垣根もなくしたいと思って、スタッフの服装を全員同じにしました。上から下まで、靴まで一緒。ワンチームでやっていきたいです。

滝本 新しいお店のSolfège は、スポーツクラブに併設されている珍しいレストランです。ですので、会員様のご利用もあります。それなら、スポーツをされた後にどんな料理を食べたいだろうかとか、スポーツをされる方の価値観はどんなものだろうとか、そういったことをイメージしながら料理を考えることも大事なのかなと思います。

成澤 お帰りに立ち寄っていただいて、バーカウンターでスタッフとの会話を楽しんでもらえるようになるといいよね。

滝本 自由が丘という土地柄ならそれができるんじゃないかな。高級住宅街というのもあって、食に対する感度が高い方々が多い。料理にキャビアやトリュフをのっていればいいというようなことではない、料理に対して本質的な部分を見られる方が多いと思います。

成澤 レストランのトレンドとしても、健康志向はこれからより強まっていくと思います。滝本とは、Solfège でも野菜を中心に、ナッツやチーズといった食材をふんだんに使っていこうと話しています。もちろんお肉やお魚のメニューもありますが、あくまで野菜をおいしく食べていただくためのガルニチュール(付け合わせ)である。そんな、ユニークな料理をお召し上がりいただけます。もちろん、ワインもオーガニックやナチュール(自然派)を取り揃えていますよ(笑)。

まっすぐなプロダクトが増えれば世界は良いものであふれるはずです

──エシカル(倫理的)な消費やサステナブル(持続可能)な社会の実現といった人類の課題に、飲食店はどれほど貢献できると思いますか。

成澤 壮大な課題ですので、飲食店だけで変えることできないと思いますが、自分たちがそれを考えるきっかけをお伝えすることはできると思っています。そのためにSolfège では、「まっすぐな」料理やワイン、サービスをしたい。「まっすぐな」というのは、たとえばワインですと、オーガニックやヴェーガン認証のワインが市場価値として高くなっていますが、認証をとることが目的になってはいけない。根本には、造り手にとっての「より良いワイン造り」のためにの手段であるはずだと思うのです。

──プロダクトの価値から、プロダクトを作る人に価値が移っていくというのも「まっすぐな」商品を求めていることの証明かもしれませんね。

滝本 それって「気遣い」だと僕は思うんです。これからは、気遣いがどれだけできるかによってモノの価値があがっていく。そしてその根底には「やさしさ」があるんですよね。料理でもそうなんですが、たとえば皿の上にソースを置く位置でも、やさしくない料理は食べづらいんです。Solfège では、皿の上にも「気遣い」をしていきたいですね。そうすると人間味がでてくると思うんです。その気遣いをお客様に感じ取っていただければ、「またSolfège で食べたい」と思っていただけるんじゃないかな。

成澤 アフターコロナ/ウィズコロナの世界では、レストランは社会の問題に無関心ではあってはいけないと思います。自分たちには、「まっすぐな」プロダクトを広く知ってほしいという、社会に届けたいメッセージがあります。Solfège は、その実現のために作ったレストランです。

滝本 日常使いのレストランよりも高級思考のレストランの方がより強いメッセージになって届けることができると思います。これからのレストランの存在意義は、その部分になってきますよね。

成澤 「まっすぐな」料理やワインを楽しんでいただくということは、「ゆがんだ」ものを見抜く力も養うことだと思います。そうすると、「歪んだ」プロダクトはなくなって、まっすぐなプロダクトで世界が溢れる。それが巡りめぐって地球の温暖化が抑制されたり、海洋資源の減少に歯止めがかかったり、人類がもつ課題の解決にもつながっていくんじゃないでしょうか。「まっすぐな」レストランであることが、飲食店ができるエシカルやサステナブルといった社会がもつ課題に対してできることではないでしょうか。

取材・構成/江六前一郎

統括支配人 成澤 亨太

1978年生まれ。東京都内にて数店舗でのソムリエを経て、支配人・ソムリエとして銀座l’Odorante、麻布十番Liberté a table de TAKEDA(ミシュランガイド*一つ星)にて研鑚。フランス、パリに本店のあるRestaurant TOYOの東京ミッドタウン日比谷の日本初出店を受け、総支配人兼シェフソムリエとして現職。今までに経験した国内外の様々なレストランとのコラボレーションを基軸に、様々な飲食店やバーのドリンク監修、ま たTBSドラマ「グランメゾン東京」のワイン選定等、レストラン業務の枠を越えた活動を行い、フレンチの枠に留まらないイノベーティブな料理に合わせて、世界中の飲料からのペアリングを提案している。

料理プロデュース 滝本 亘

1981年生まれ。大阪府出身。豊中市(現在、大阪府福島市に移転)レストランミチノ・ル・トゥールビヨンでフランス料理の基礎を学ぶ。約20年に渡り南仏でミシュランの星に輝き続けるモダン・キュイジーヌの先駆者、プルセル兄弟の繊細で軽やかな世界を東京で発信し続けている「丸の内 Sens & Saveurs」を経て、広尾、レストランひらまつ本店にてスーシェフを務める。その後、麻布十番 Liberté a table de TAKEDA (ミシュランガイド *一つ星)へ。海外でのイベントにも数多く同行し、確かな料理感覚を持ち合わせている。

コンセプトワーク 江六前一郎

元料理王国副編集長。2002年に雑誌・書籍の編集プロダクション「タミワオフィス」に入社。講談社パートワークシリーズや食の専門月誌『月刊料理王国』など、歴史、文化、芸術、食の分野で編集を行う。2020年5月にフリーの編集者に。